「習いに行くぜ!東北へ!!」始めた経緯と、考えたこと、感じたこと。
これまでJCDNでは、震災以降、ダンスアーティストによる復興支援マッチングサイト「被災地にからだとこころを元気にするダンスを届けます!~からだをほぐせば、こころもほぐれてくる~」http://dance-aid.blogspot.jp/ を立ち上げ、ブルームバーグ社の支援を受け、多くのアーティストとともに被災地に行き、体ほぐしなどの活動を2年間に渡り行ってきました。
しかし被災地に通いながら思っていたことは、アーティストが何かをしに行くことが、行く方は被災地の方々を元気つけたい、何かの役に立ちたいという思いを持って行くのですが、どうしてもそこに参加する人が受身になってしまうということでした。震災後のしばらくの時期はそれしかなかったと思うのですが、2年を過ぎた頃から、被災地の方が主体となり、外からのアーティストを含む人々が、東北の文化芸能を学びに行くようなことができないだろうか。そのことによって、新しい関係性が生まれ、被災地の方々が中心となり、新しい文化を作っていくことができないだろうかと考えました。
そのひとつの方法として、昨年8月より、アーティストが「何かできることをおこないに行く」のではなく「東北の郷土芸能や文化を“習い”に行く「習いに行くぜ!東北へ!!」を開始しました。
第一弾は、被災地で開催される「盆踊り」を習い、一緒に踊る踊り手ボランティアを募集し、被災地6地域へ伺いました。各地域で多くの方々と出会いました。一緒に盆踊りを踊ることによって、ようやく、被災された方々に何かをしに行く人ではなく、同じ人として出会えた感じがしました。
今回の文化庁の被災地でのアーティスト・イン・レジデンス事業は、その「習いに行くぜ」の第二弾として位置づけました。海外のアーティストが被災地に1ヶ月間滞在することによって、国際的な視野で東北の郷土芸能を体験し、出会うことによって、世界的な規模で新しいムーブメントを起こすことができないだろうかと考えました。
この1ヶ月間、あまりにも多くの出会いがあり、書ききれないほどの多くの得ることがありました。
5点だけ挙げさせていただきます。
1)もっとも大きなことだと思えたことは、支援をしにいくという感覚がなくなり、東北の面白い人たちと出会い、その人や、郷土芸能への純粋な興味、好奇心から一緒に何かを創って行くという感覚をもてたことです。2年を過ぎたころに、ある被災地の方から、「もう外から何も来てくれなくて良い、もう自分たちの足で立ち上がることが必要なのだ」という言葉が強く私には残っていました。その意味でようやく支援をするのではなく、“一緒に何かを創って行くことが出来る”きっかけになったことは大きなことだと思いました。
2)次に、具体的なこととして、大船渡市越喜来の金津流浦浜獅子躍の会長である古水力氏に出会えたことです。実際には難しいと思っていた、東北の郷土芸能を習うということが、古水氏との出会いによって、実現できたことです。古水氏より、郷土芸能を習うだけではなく、郷土芸能に対する深い想いを伺えたことにより、これまで私たちにとって遠くの存在だった郷土芸能が、とても日本にとって重要で、大切なものであることを感じることが出来ました。
そして今後海外や日本のアーティストがレジデンスをして、郷土芸能を習ったり、次なる作品を創ったりするための、拠点に出会うことが出来そうです。津波によって流されてしまった郷土芸能の稽古場を、今年の6月までに再建し、国際的な文化芸能の交流センターとして、広く開放したいという古水氏の想いに応え、これからここをひとつの拠点として活動していきたいと考えています。現在建設のための寄付金を募集していますので、是非皆様お力を貸してください。
「浦浜民俗芸能伝承館・建設募金のお願い」WEB PAGE▶
3)レジデンスアーティストのセシリアがナビゲートする、被災地の郷土芸能や文化を紹介する映像作品を、3つ制作することが出来ました。現在英語字幕を制作中です。これまで東北の郷土芸能を紹介する英語のサイトや映像がなかった(あったとしても観光案内のなかに写真一枚と簡単な説明ぐらい)ので、今回の映像を世界に発信することによって、世界の興味がある人々にとって、東北を訪れるきっかけが作れると思います。特にセシリアが習っていることによって、海外の人にとって、親しみやすいものになっていると思います。
4)現地の信頼できるコーディネーターに出会えたことです。大船渡の合同会社「みんなのしるし」と気仙沼市の「気楽会」です。これまでは、被災地のコーディネーターと出会うことが出来なかったために、単発で終わることが多かった我々の活動が、同じ志を持った現地のコーディネーターと共に、次のことを話し合い、考えられるので、継続的な活動が出来るようになりました。
5)このレジデンスによって、未来に向けた文化芸術による復興の具体的な方向性が見えたことです。郷土芸能の方々と話す中で、各地域にとって郷土芸能が心の支えになっているが、後継者不足ということがあり、どのように継続していけるかが大きな課題であるというお話を伺い、この習いに行くぜを発展させて、国際的なフェスティバルを開催することによって、海外の人たちが東北を訪れる。ゆくゆくは、日本人がバリ舞踊やハワイアンダンスなどを習いに行くように、海外や日本各地の人たちが、被災地の郷土芸能を習いに行くようなことが出来るのではと思った。岩手、宮城、福島の3県で、2000以上の郷土芸能のグループがあり、芸能の宝庫と言われる東北ならば、バリ島のように芸能を柱とした観光、産業というものがありえるのでないかと思いました。
最後に「文化芸術で復興支援」という言葉は、外から来る「文化芸術」ではなくて、東北内にある文化芸術をみんなで大事にして、活発にすることだと思います。国内外の人たちが、ひとつの芸能をきっかけに、被災地を訪れ、第二の故郷になることを願っています。
(文責:NPO法人JCDN佐東範一)
「習いに行くぜ!東北へ!!」第一弾 (2013年8月3〜18日)
仙台市に本社を置く河北新報社主催の「やりましょう盆踊り」に、踊り手ボランティアとして参加しました。8月3日宮城県東松島市赤井柳区から始まった盆踊り、10日東松島市宮戸、11日名取市閖上(ゆりあげ)、14日南三陸町、16日亘理町、そして18日石巻市不動町の6ヶ所で、盆踊りを習い、踊ってきました。並行して、京都などで浴衣の寄付を募り、協力をさせていただきました。
「踊り手ボランティア」に参加してくれた踊り手の皆様、浴衣を寄付していただいた皆様、「やりましょう盆踊り」の与野さん、そして受け入れていただいた各地の関係者の皆様、本当にありがとうございました。あまりにも、密度の濃すぎる時間でした。一緒に踊るということが、言葉で会話する以上に、いろんなことを感じる日々でした。詳しくは、フェイスブック「習いに行くぜ!東北へ!!」に各地のレポートがあります。
「習いに行くぜ!東北へ!!」第二弾 (2013年10月18日〜11月18日)
英国からコミュニティダンスのアーティスト、セシリア・マクファーレン氏を招いて行いました。各地で日本人ダンスアーティストも参加しました。
被災地の郷土芸能を習うとともに、セシリアのコミュニティダンスのワークショップも行い、未来に向けて”イギリスのコミュニティダンスと東北の郷土芸能の融合による新たな舞台芸術の創出”をテーマに、1ヶ月間下記の地域に滞在し、様々な郷土芸能を習うとともに、各地の人々と出会い、話し、地域の文化に深く触れる1ヶ月間でした。
岩手県
大船渡市越喜来・・・・浦浜念仏剣舞、金津流浦浜獅子躍り
大槌町・・・・鶏子舞
住田町・・・小府金神楽
大船渡市末崎・・・・七福神、御祝
宮城県
宮城県気仙沼市唐桑・・・・神止まり七福神、浜甚句
東北の文化芸能の多様性と奥深さ、地域にとっての郷土芸能の重要性に直接習い、語り合うことによって、今後この被災地で郷土芸能を主軸とした国際芸術祭の開催や、日本各地そして世界の人たちが、東北の郷土芸能を習いに来る仕組みが作れないかと思いました。
多くの方々に出会い、本当に充実した経験でした。
平成25年度文化庁文化芸術の海外発信拠点形成事業
「イギリスのコミュニティダンスと東北の郷土芸能の融合による新たな舞台芸術の創出」
主催:NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)
現地コーディネート:みんなのしるし(大船渡)、気楽会(気仙沼)
JCDN(ジャパンコンテンポラリーダンスネットワーク)
代表 佐東範一